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2013年10月03日号

1;石炭灰ビジネス強化~太平洋セメント

太平洋セメントは、「石炭灰ビジネス」を強化する。政府が石炭火力発電所の新設を容認するなど石炭灰の排出量がなお増え続けるとの見通しが背景にある。同社は、石炭灰やフライアッシュ(FA)セメントの輸出を拡大するとともに、今年度中に部門横断チームを新設し、セメントの原料代替や混合材として石炭灰をさらに取り込める技術の研究開発に着手する。

福島第一原発事故以降、石炭火力発電所の稼働率向上に伴い石炭灰の排出量も増えている。発電所系の石炭灰の約6割をセメント業界が引き取り、そのほとんどが原料代替として利用されている。セメント協会のまとめによると、昨年度の石炭灰の使用量は前年比2・5%増の687万トンと2年連続で増加した。

原発再稼働問題の行方が不透明なことから、石炭火力の稼働率は高止まりで推移する公算が大きい。加えて政府が石炭火力容認に舵を切ったことで、電力各社に能力増強の動きが出てきている。

太平洋セメントの石炭灰の受入量は業界トップ。昨年度実績は前年比10万トン増の260万トンだった。今年度は1割増の290万トンを見込む。環境事業担当の北林勇一・取締役常務執行役員は、「石炭火力が立ち上がってくる2016~17年に向けて、石炭灰の利用メニューを早急に整えたい」と語る。

石灰石の品位にもよるが、セメント1トン当たりの石炭灰の使用量はおおむね150キロが上限とされている。セメント需要は回復しているとはいえ、漸増する石炭灰を吸収できる余地は徐々に狭まっている。

同社は、石炭灰やFAセメントの輸出を増やしていく方針だ。電力会社と同社の持分法適用会社である韓国・雙龍セメントを同社が仲介する形で、02年から石炭灰輸出を行っている。昨年度から香港のセメントメーカーへの輸出を始め、輸出量は両国合計で60万トンだった。

北林常務は、「当社グループの枠組みの中で石炭灰輸出を増やしていく」と同社が拠点を持つベトナムなど各国への働きかけを強め、輸出ルートを開拓する考え。

「セメントの原料代替としてより使える研究も進める」(同)。環境事業部、生産部、中央研究所など部門横断チームを編成し、セメント混合材としての利用拡大を含めて技術構築を急ぐ。

遊休設備を保管に活用

一方、石炭灰の貯蔵能力を高めるため、「アッシュセンター」を拡充する。すでに構造改革でセメント生産を中止した秩父、土佐、佐伯各工場のセメントサイロを石炭灰保管に転用、電力会社に貸与している。クリンカサイロの転用や遊休SSの活用も視野に入れる。