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2013年08月01日号

1;「安定供給に全力」~セメント

セメントの国内需要が従来予想を大きく上回るペースで推移している。セメント協会が7月25日発表した4~6月の国内販売(輸入除く)は1093万3千トンと前年同期を6・9%上回った。数量にして70万2千トンの増加。同協会は今年度内需を前年比140万トン増の4600万トンと想定しているが、出足の3か月で増加見込み分の「半分を達成した」(氣仙伊作流通委員長)。東日本大震災被災地での需要増大は織り込み済みだったが、関東一区など大都市圏の民間投資が予想以上に強い。加えて、九州や近畿での災害復旧工事も出荷を押し上げている。秋の需要期を前に、すでに需給はタイト化の度合いを増す。セメントメーカー各社は物流能力の向上、輸出の削減など安定供給に全力を注いでいる。

6月の国内販売も前年実績を上回り、連続増加は6か月となった。出荷日が1日少なかったため、実質は7%のプラス。東北が引き続き最大のけん引役で、同協会が1950年に販売統計を開始以来初めて、単月販売が東海を上回った。被災地では人手不足などによる復興の遅れが指摘されながらも、三大都市圏の一角を凌駕する需要が出ている。

九州は福岡での民需、熊本、大分での災復工事がけん引して3か月連続で2ケタ増となった。関東一区は、現場の技能者不足による工事遅延の影響を受けながらも伸びを持続している。

4~6月販売は、関東二区、北陸、四国を除く8地区で前年実績を上回った。東北は33・6%増の115万トン、九州が16・7%増の132万トン、関東一区が7・6%増の262万1千トンとなり、この3地区でプラス分のほとんどを占めた。東海は1・6%増の114万8千トンで、東北を1500トン下回った。

7月販売は20日時点で1日当たり前年比6・9%増。出荷日が1日少ないため、月末では実質4%程度のプラスになったもよう。セメント需要の先行指標である公共工事前払金、建築着工も依然好調で、当面、伸びが急激に鈍る可能性は低い。

輸出は減少が続く。メーカー各社が内需対応への傾斜を深めているためで、6月は約12年ぶりに50万トンを割り込んだ。現在のペースが続けば、通期で800万トン前後(昨年度は963万トン)にとどまる。

今年度の内需は「4600万トンを上回るのは確実」(氣仙委員長)で、業界内には4750万トンくらいまで上振れるとの見方が出始めている。メーカー各社は増える内需に対応するため、生産面ではフル操業の維持、物流面ではタンカーの造船や傭船の確保など輸送能力の向上に努めている。氣仙委員長は「復興、国土強靭化に協力するため、(業界が)一丸となって安定供給に努めたい」と語る。

誤算も出ている。同協会は需要が低調な地域から好調な地域への車両などの斡旋を検討していたが、予想に反しほぼ全国的に需要が上向いてきたため、その実行が難しくなってきた。秋の需要期をどう乗り切るかメーカー各社は思案を続けている。