1;生コン値上げ出遅れ~近畿
生コン値上げが全国的に広がる中で、近畿は総じて出遅れている。受注競争で事業環境が厳しく、生コン協同組合が値上げに舵を切れないためだ。しかし、電力の値上がりに加え、ここへきて骨材業者が販売姿勢を強めており、コストアップ懸念が増大している。今後、価格の底上げを絡めてコストを転嫁する生コン値上げの動きが出てくる可能性もある。
近畿の生コン出荷は堅調。4~5月の実績(非組合員推定)は、全府県で前年実績を上回り、6・6%増の227万8千m3となった。大阪兵庫を除き2ケタプラスで、中でも、紀伊半島豪雨災害の復旧工事、国体関連工事、自動車道路工事など向けが出ている和歌山は26%増と大きく伸びた。災害復旧工事は奈良でも出ている。ただ、昨年度が好調だった反動で、出荷が落ち込んでいる地域もある。
昨年度の近畿の出荷は1200万m3を超え、4年ぶりに1100万m3台を脱した。今年度も一時より勢いは鈍化したものの災復工事が引き続き出ており、また、新名神高速道路工事など大型物件への納入が本格化すること、マンション工事も復調していることから2年連続での1200万m3超は確実な情勢だ。
しかし、価格面では、好転してきた需要環境を活かしきれていない。直近の生コン値上げは和歌山県に集中。和歌山県中央、紀北、橋本・伊都各協組が昨年4~6月に販売価格を1000円引き上げ、昨秋頃までにおおむね浸透した。各協組の組織率は100%で、盤石な共販事業を展開する。紀南協組も追随して4月から1000円値上げに取り組んでいる。また、滋賀県では湖東生コン協組が4月に販売価格を価格表から1000円引きの1万5700円(18・18・20)に改定、その浸透に努めている。
このほか価格が低迷している地域では、一部の協組が値戻しに取り組んでいるものの、成果は限定的だ。背景には、員外社問題などで協組の市況形成力が低下していることがある。
中でも、近畿最大の大阪市場では協組が林立、員外社を加えた4勢力が受注にしのぎを削っている。市況下落に歯止めがかからず、調査会の表示価格も断続的に引き下げられている。
受注競争激化で経営が悪化した「(16年前の)大阪広域協組発足前夜のような雰囲気」(大阪の生コン会社幹部)との指摘もある。正常化に向けた一歩として協同組合連合会の設立が模索されている。だが、その一方で、ある生コン会社の社長は「まだその時期ではない」との認識を示すなど市場に向き合う姿勢は一様ではなく、先行き不透明な状況が続きそうだ。
近畿でも骨材業者が値上げを打ち出している。大阪府砂利石材協同組合と近畿砕石協同組合は5月、コンクリート用骨材を今夏にトン700円引き上げると表明した。電力値上がりや輸送コストの上昇分などを転嫁する目的とされる。
九州産海砂など域外品もトン300円程度の値上げを打ち出している。骨材ソースが限定され、売り手が強い地域では「値上げに抵抗できないだろう」(京都北部の生コン会社幹部)。ただ、交渉はスタートラインに立ったばかりで、生コン会社は全般に様子見の姿勢だ。骨材値上げに対する抵抗は強いが、一部の生コン協組はコストアップを理由に、下がった価格を押し戻したい意向を示している。