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2013年06月06日号

1;新たな秩序を模索~大阪の生コン

 受注競争が長期化する大阪の生コン市場で、新たな秩序形成を模索する動きがでてきた。
勢力図も複雑化
 大阪の生コン市場は、2010年暮頃から受注競争が激化した。その年の長期ストライキで生コン供給がほぼ全面的にストップ。需要家の離反による市場占有率の急落に危機感を強めた大阪広域生コンクリート協同組合が営業政策を転換して数量確保に乗り出したことがターニングポイントになった。
 大阪広域協組が競争に参入したことで、同協組のシェアを他勢力が削り取るという従来構図が崩れ、生コン市況は下げ足を速めた。
 域内の勢力図も複雑化した。第2組合の阪神地区生コン協同組合に続き、大阪レディーミクストコンクリート協同組合が発足。600万m3前後と推定される需要を複数の勢力が切り取る格好になっている。
取り残される
 『建設物価』6月号によると、大阪の主要都市の生コン市況(18・18・20)は、大阪1万1800円、茨木1万1700円、堺1万1800円、泉佐野1万1400円で、競争激化前の10年10月との対比で1200~1400円下落した。大阪の生コン生産者価格(生コン流通統計から算出)も11年から下げに転じ、昨年は1万4781円と前年に比べ840円ダウンした。
 札幌、仙台、熊本といった陥没市場で協組が再構築するなど全国の主要都市で生コン市況が上向く中で、阪神圏だけが取り残された格好になっている。
 下げ足は一時より緩んだものの、消耗戦が続いていることに変わりない。生コン会社の経営破綻も散発的に発生している。さらに、電力料金の値上がりなどコストが上昇してきており、ここへきて骨材業者が値上げを打ち出した。「このままでは経営は立ち行かなくなる。生コン値上げに動くべきだ」(大阪の生コン会社)との切実な声が出始めており、新たな秩序作りが必要とされている。
影響力を確保
 大阪広域協組は5月30日に開いた通常総会で、今年度の販売価格について「電力料金の値上げ、資材高騰によるコストの大幅アップが見込まれる。当面1万4800円を堅持するが、商業ベースを考慮した値上げを検討していく」ことを決めた。だが、シェア40%程度では、値上げに取り組んだとしても成果は限定的になる公算が大きい。ほかの協組が共販を行っていない状況では、ふたたびシェア低下を招く恐れもある。
 大阪広域協組は、市場において一定のプレゼンスを確保するために、シェアを過半まで高めるとの従来目標を変えていない。数量確保策を続行する方針で、今年度は、特に、地場ゼネコンからの受注拡大を目論む。組合員に対し小口納入に適切に対応できるよう小型車の配備などを求めた。
「和して拓く」
 市場安定化に向けて残された選択肢が少ないのも事実だ。そうした中で、協組連合会を出発点とする結集・統合への模索が始まった。
 29日の総会で大阪兵庫生コンクリート工業組合の理事長に選任された小林俊雄氏は、就任あいさつの中で、「市況の低迷で事業環境は深刻な状況。非常に憂慮している」と懸念を表明した。
 「和して拓く」との自らの年頭の抱負を紹介。争いに終止符を打ち、目的や志を共有して未来に向かって歩を進めるべきとの考えを示したうえで、「個々の企業の力は弱いが、心を1つにすれば大きな力を発揮できる」と暗に大同団結を促した。