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2013年04月18日号

1;震災教訓に対策提言~JCI

 日本コンクリート工学会(JCI)は10日、東日本大震災特別委員会の検討成果を第2次提言としてまとめ、公表した。提言には「地震」、「津波」、「材料生産・施工」、「原発事故対応」、「復旧・復興」、「他学会との連携」の6項目で構成され、震災を教訓として今後講じるべき対策をまとめた。被災時に生コン工場が供給に支障をきたすことのないように取るべき対策や、震災で発生した災害がれきの有効利用、福島第一原発事故処理へのコンクリートの活用などについてコンクリート工学の見地から取るべき対策の方向性を示したことが特徴となっている。
 材料・施工上の対策では、津波で被災した生コン工場で生産情報が流出したことでJIS再認証に遅れが見られた。このため、生コン製造者に対して生産情報の保管方法を改めて検討するように促した。
 さらに、被災からの復興では膨大な量の建設資材が必要となるため、平常時とは異なる緊急時対応として品質・性能・用途などの技術的検討も必要であるとした。
 また、東日本大震災では被災地に生産拠点がある材料を用いて許認可を得た被災地以外の工事で材料の供給不足が生じたことから、今後は許認可の取得方法について、東日本大震災のような甚大な被害を受けた場合には被災地以外でも特別な措置を講じられるような基準類の整備が必要だと提言した。
 福島第一原子力発電所の事故処理対策では、原子炉の廃炉まで長期間の作業を要する。このため、原発構造物の残存性能評価を行うとともに、温度・湿度・放射線・塩化物などの影響を受けるコンクリートや鉄筋などの長期にわたる残存性能の変化を推定。必要に応じて構造体の補修・補強方法も検討して提案する。さらに、放射性物質の漏えい防止にも取り組む。鉄筋コンクリート部材ならびに機器・配管系の損傷を考慮し、原子力発電所建屋からの放射性物質の拡散防止方法を確立する。コンクリート工学だけでは課題解決が困難であることから土木・建築など関連分野と連携・協力して構築することが必要であることを提言に盛り込んだ。
 復旧・復興に向けては、震災がれきを被災地復旧のための貴重な資源として活用することを提言した。しかし、現行のJIS制度では規格外の材料を使用することが難しいことからJCIでは今後、JIS規格外材料の有効利用に関する委員会を設置して、震災がれきを有効利用する方策を検討する考え。