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2013年02月21日号

1:生産・物流基盤を強化~セメント値上げ

 セメントメーカー各社がセメント、固化材の値上げを相次いで表明している。宇部三菱セメントが13日に打ち出し、大手3社が出そろった。事業継続可能な収益の確保や脱産廃処理依存・セメント事業単独での黒字化などが理由だ。弱含み傾向にある工事口向け価格の是正や地域間・ユーザー間の値差圧縮といった懸案の前進も目論む。震災復興需要を背景にセメント需給はタイト化しており、一時より交渉を進めやすい環境になっている。
 実質的な値上げは2年ぶり。先陣を切ったのが住友大阪セメントで、昨年暮れに4月1日出荷分から1000~1500円引き上げることを決めた。セメント事業単独での黒字確保を目指し、3年前に目標設定した2000~2500円値上げの過程という位置付け。脱産廃処理依存という同社の考えに共感するメーカーは多く、宇部三菱セメントもそれを理由に挙げている。
 太平洋セメントは2年前に打ち出した1000円以上の値上げの未達分の受入れを求める。提示額は平均700~800円で、4月1日出荷分からの実施を目指す。期間契約の定着も図る考えだ。
 中堅メーカーも追随している。トクヤマは4月1日出荷分から1000円以上上げる。2年前の値上げでは1300円以上という目標に対し、300~500円の受入れにとどまった。これまでの石炭価格の上昇分の転嫁が不十分の中で、設備修繕など諸々のコストが膨らんでいることから、改めて値上げを打ち出した。電気化学工業も4月1日出荷分から1000円引き上げる。
 1000円値上げを実現した08年度以降、メーカー各社は継続的に値上げに取り組んできたものの、その成果は一定の域を出ていない。その一方、諸経費の削減を優先し、設備の修繕や更新を先送りしてきた結果、設備トラブルが増えている。物流コストも膨らむ。メーカー各社は、復興需要に対応するため、廃船の先延ばしや閉鎖SSの再稼働、臨時タンクを設置するなどしている。今回の値上げは、そうした投資への原資を確保し、生産・物流基盤を強化する狙いがある。
 一方、生コン業界では、セメント値上げを織り込んだ価格改定の動きはまだ限定的。これからの交渉の成り行きによって転嫁値上げをするかどうか決めるという声が多い。