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2013年01月10日号

1;セメント値上げ~住友大阪、4月から1000~1500円

 住友大阪セメントは、セメント・固化材価格を4月1日出荷分からトン当たり1000~1500円上げる。セメント事業の収益構造を廃棄物リサイクルに頼らない形に転換するという3年前に掲げた目標の達成に向けた取り組みの一環。これまでの値上げ成果は限定的だったが、今年度に入り最大ユーザーである生コン業界の業況が持ち直してきたこと、東日本大震災の復興需要を背景に需給がタイトになっていることから、値上げが通りやすい環境が整ったと判断、目標に向けてあらためて舵を切った。
 12月に開いた営業会議で値上げを指示した。各支店は特約店会議を今月中に開き、今回の値上げ方針を説明したうえで、生コンなど需要家との交渉に入る。
 住友大阪セメントは2010年春、同年7月から2年半余りをかけて2000~2500円値上げする方針を表明した。再投資可能な価格を確保し、合理化の歴史の過程でセメント事業に組み込まれた廃棄物リサイクル事業を切り離す狙い。だが、10年度の値上げは不発に終わり、11年度は300~500円の浸透にとどまった。今年度は10月値上げを目論んだものの、需要家との交渉は進展せず、上期価格据え置きで下期の契約を結んでいる。
 需要減や市況低迷による生コンの経営悪化が値上げ交渉の足かせになっていたが、今年度に入り風向きが変わった。札幌、仙台、北九州などの主要都市で生コンの市況改善が進展、熊本市内地域で新生コン協同組合が発足するなど再構築の機運も高まっている。また、東日本では需給ひっ迫による骨材価格の上昇を転嫁する値上げが広がっている。
 さらに、震災復興や大都市圏での民需がけん引する形でセメント需要も底堅く推移しており、今年度は従来予想を100万~200万トン上回る4400万~4500万トンになるもよう。4000万トン前後をターゲットに置いた業界各社の合理化がほぼ終了した段階で需要増加局面に入り、需給タイト化が顕著になっている。
 同社は、取り巻く環境が変わったと判断、値上げする方針を決めた。藤末亮取締役常務執行役員は「震災以降、セメント・コンクリートに対する社会の見方が変わってきている。震災復興、防災・減災という社会的役割を確実に果たすためにも値上げは必要」と強調する。
 今回の値上げを通じて地区間価格差の圧縮など懸案の前進も目論む。この1~2年、安値が目立つ工事口向けについては、4月を待たずに引き合いがあり次第、現行の取引価格に対し1000~1500円の上積みを求める方針。また、最終目標は従来の2000~2500円で据え置き、いくつかの段階を踏んで到達を目指す。
追随の可能性も
 業界各社のセメント事業の業績は改善しているが、合理化効果と数量増に負うところが大きく、価格面は抜け落ちている。老朽設備の維持・更新費用などを含めた再投資可能な価格の確保は業界共通の課題であり、そのためには価格水準をあと数段階上げる必要があるとされている。セメント事業から廃棄物リサイクル事業を切り離すべきとの考え方も共有されつつあることから、今後、他社も追随する可能性がある。