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2012年07月19日号

1;生産物流 震災前に回復~東北

 東日本大震災で被災した太平洋セメントの大船渡工場が6月28日に完全復旧し、東北地区のセメント生産・物流能力は震災前に戻った。復旧・復興工事は本 格化する一歩手前だが、すでにセメントなど建設資材需要は右肩上がりで増加する。今年度の東北地区のセメント販売量は400万トン超が確実視される中で、 安定供給に向けた基盤が整った。
 東北・茨城の太平洋沿岸部のセメント4工場、15SSが震災被害を受けた。メーカー各社は直後に被害状況の確認や復旧作業に着手するとともに、東北地区へのセメント供給が滞らないよう日本海側や内陸からの供給ルートを設備した。
 日立セメントの日立工場、三菱マテリアルの青森、岩手両工場、八戸セメントは震災から1月程度で相次いで復旧。被災SSも半年余りでおおむね復旧した。 津波で主要施設が壊滅的な打撃を受けた大船渡工場は昨年11月に5号キルンでのセメント生産を再開、1年4か月余りを経て1号キルンも復旧した。
 東北地区のセメント需要は増加推移している。セメント協会のまとめによると、昨年度のセメント販売量は前年比5・2%増の300万8千トンと2年ぶりに 300万トン台に回復。中でも、激甚被災地の岩手、宮城、福島各県は10%前後の高い伸びを記録した。今年度も4月が前年同月比87・4%増、5月が同 67・1%増となり、関東一区など大都市圏と並んで需要のけん引役になっている。
 下期から増加ペースが一段と加速するとの見方が広がっており、通期では前年に対し5割増の450万トンにまで膨らむとの観測もある。
 復興工事の本格化を直前に控える中で、東北地区のセメント生産・物流能力が回復した。メーカー各社は、セメントや固化材など各種製品の「安定供給」に全力を注ぎ、早期復興を後押しする方針を表明している。