文字サイズ(変更方法 文字サイズを大きく 文字サイズを小さく
2012年06月14日号

1;開始から四半世紀余~生コン受入試験代行の有料化

 生コンの協同組合あるいは工業組合による生コン現場受入検査のための試験代行有料化は未着手だった県で昨年新たに始められ、これで全国47都道府県のすべてに及んだ。有料化は1986年の茨城県南部生コン協同組合(つくば市)がその先駆けとみられているが、それから四半世紀余が経つ。
 86年は生コンの現場採取試験(代行試験)会社の起点でもある。この年に東京都が制定した「建築物の工事における試験及び検査に関する東京都取扱要綱」に、建築物の構造体コンクリートの試験検査をする採取試験会社が位置づけられた。セメントジャーナル社が調べたところでは採取試験事業者は現在、首都圏(1都3県)に約50社、北関東に3社1営業所、京阪神・奈良圏に約20社、福岡圏に3社余、名古屋圏に2社。
 生コン生産者の組合による受入試験代行の有料化は全国に行き渡ったといっても、それは有料化に関わる問題が終息したことを意味しない。各地の有料化の手法、実態は各様で、試験料金の請求、集金を協同組合が行っている地域があり、工業組合が窓口のところもある。岐阜県では試験代行を工業組合共同試験場の事業と位置づけ、共同試験場を窓口とするかたちをとっている。三重県もかつては共同試験場の事業としていたが、08年に共同試験場が社団法人に組織替えとなったあとは工業組合による事業に移行している。
 そのほか、協同組合が有料化の方針を打ち出し、料金の請求、集金は組合員が個々に行うという手法の地域もあり、協組員が共同で設立した試験会社が一手に代行しているというところもある。
 試験料金を生コン代金と合わせて集金する手法もあれば、分けて集金する手法もある。あるいは事前に購入してもらっているチケットで支払いを受けるという手法もある。JISでは150m3に1回の試験が義務づけられていることから、それについては無料扱いとしているところもあり、有料としているところもある。工業組合が窓口となっている試験代行では、地域によっては非協組員、あるいは工組員・非協組員が参加しているというように、手法は多様だ。
 受入試験代行有料化ではいずれの地域も浸透度を上げることを課題としている。しかし現実と目標の間にギャップがある。かつて県下の協同組合が足並みを揃えて有料化に踏み切ったが、現在は浸透度に大きな地域差が生じているところもある。中には有料化を始めた頃に比べて回収する料金が大幅に減少したため、今年度は有料化のあり方を見直す組合もあり、そのほかにも大手の建築向けも含めて浸透度を上げる取り組みを始めた組合もある。
 受入試験代行有料化は四半世紀を経て、地域によっては制度設計も含めて見直しの時機を迎えている。