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【2006年(第6回)コンクリート診断士 試験問題の解答例】

※この解答例はセメントジャーナル社で制作したものです。試験の主催者(日本コンクリート工学協会)が発表したものではありません。ご質問やお気付きの点がございましたらこちらまでお知らせ下さい。
※試験問題は掲載しておりません。ご了承下さいますようお願い申し上げます。

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問題【コンクリート】

問題1 × 問題2 問題3 × 問題4 × 問題5
問題6 問題7 × 問題8 × 問題9 × 問題10 ×
問題11 問題12 問題13 問題14 × 問題15 ×
問題16 × 問題17 問題18 × 問題19 問題20 ×
問題21 問題22 問題23 × 問題24 × 問題25
問題26 問題27 問題28 × 問題29 問題30 ×
問題31 × 問題32 × 問題33 問題34 × 問題35
問題36 × 問題37 × 問題38 × 問題39 × 問題40 ×
問題41 問題42 × 問題43 × 問題44 問題45
問題46 問題47 問題48 問題49 × 問題50 ×
問題51 × 問題52 × 問題53 × 問題54 問題55
問題56 問題57 問題58 × 問題59 × 問題60 ×
問題61 問題62 問題63 × 問題64 × 問題65 ×
問題66 問題67 × 問題68 × 問題69 × 問題70
問題71 × 問題72 × 問題73 問題74 × 問題75
問題76 × 問題77 × 問題78 × 問題79 × 問題80 ×
問題81 × 問題82 × 問題83 問題84 問題85
問題86 × 問題87 × 問題88 問題89 × 問題90 ×
問題91 問題92 問題93 問題94 問題95 ×
問題96 × 問題97 × 問題98 × 問題99 × 問題100 ×

問題【診断士】

問題1 4 問題2 4 問題3 3 問題4 2 問題5 3
問題6 4 問題7 4 問題8 3 問題9 3 問題10 3
問題11 2 問題12 3 問題13 2 問題14 2 問題15 1
問題16 3 問題17 3 問題18 4 問題19 1 問題20 2
問題21 1 問題22 4 問題23 2 問題24 3 問題25 4
問題26 2 問題27 3 問題28 3 問題29 2 問題30 2
問題31 1 問題32 3 問題33 4 問題34 2 問題35 1
問題36 4 問題37 2 問題38 1 問題39 4 問題40 1
問題41 4 問題42 3 問題43 2 問題44 4 問題45 2
問題46 2 問題47 4 問題48 3 問題49 1 問題50 1
 

記述式問題の解答例[小論文]

[問題A]

【問題解説】本問題は、2005年11月に発覚した耐震偽装問題を例に挙げ、コンクリート診断士としての資質やモラルについての基本的な考え方を問う問題である。

解答例■ 問1

 耐震偽装問題については国会で証人喚問が行われその後に逮捕者が出たものの、2006年7月現在では建設会社やマンション販売会社、コンサルタントらが関与する「組織的犯罪」は立証されず、建築士個人の犯罪という結論になっている。しかし、建築士の4人に1人が「発注者から過剰なコストダウンの要求(つまり不当な圧力)を受けた経験がある」との調査結果があることや、偽装することによって建築士が負わなければならない社会的責任が非常に大きいことを考えると、全ての物件が建築士個人の犯罪であるとは言いきれないと考えられる要素もある。

この事件が発覚し社会生活に不安を与えた背景にある問題点を、技術者の観点からみた場合、解答者の立場によってさまざまな事項が挙げられると考えられる。ここでは、@職業倫理にかかわる問題点、A計算結果の過信に関する問題点、B社会的風潮の問題点挙げて問1の解説とする。なお、その他には、建築士の法的規制や罰金制度があいまいであったことなども問題点として挙げられる。

<職業倫理にかかわる問題点>

 建築工事では、発注者→設計技術者(設計者)→施工技術者(施工者)→技能者(協力業者)の順に請負業務が行われて一つの構造物が完成する。その過程において、一般に上位にあるものの意見が優先される気質がある。このとき、技術的に無理な事項が指示された場合にはそれが職業倫理に反することであれば、強い姿勢をもって協議することが必要である。しかし、この事件の場合、不正な方法によって解決したと考えられることが問題点として挙げられる。

<計算結果の過信に関する問題点>

 この20年間にコンピュータの普及とともに、設計業務においても複雑な構造計算ができるようになった。また、その手法も多様化していることから、建築確認業務において計算過程の全てをチェックすることはほぼ不可能であると考えられる。一方で、我々はコンピュータで出力された数値を過信することがあり、重大な間違いが生じている場合にも気付かないで見過ごしてしまうことがある。つまり、常識的な数値を確認しながら物事を確認したり判断したりする能力が不足していることが問題点として挙げられる。

<社会的風潮に関する問題点>

 バブル経済の崩壊以後、あらゆる産業において価格破壊が生じ、建設業界でもイニシャルコストを削減する風潮が、とくにマンション業界で盛んになった。一方で、高級感を求める消費者の意識は以前と大きく変わらないことから、建物の外観や内装を重視した発注者の考えが、一般消費者には一見判別しにくい構造的な要素での過剰なイニシャルコストの削減を余儀なくしたこが問題点として挙げられる。また、この事件が、社会的に大きな不安を与えた要因には、たとえば「倒壊」や「大破」など、一般消費者と建築技術者との間で用語の定義が一致しないまま報道がなされた風潮も問題点として挙げられる。


解答例■ 問2

以下の事項が網羅されるように述べるとよい。

 コンクリート診断士には、
@劣化の程度を診断する資質、 A維持管理方法を提案する資質が求められている。劣化程度の診断には、計画、調査、測定、評価する能力が、維持管理方法を提案能力には、劣化の進行予測、各種対策の効果を予測する能力が必要である。また、少しずつ異なる各々の構造物に対して、適切に対応できる知識、知恵、技術も必要である。さらに、近年は測定や評価、補修・補強にかかわる材料や構工法の研究開発が盛んに行われていることから、 B新技術に関する情報収集を怠らない姿勢が大切である。

 また、診断に当たっては、 @社会的資本(国家の資産)を維持するという認識、 A偏りのない公平さ B職業倫理に反する行為は許されないこと、 Cコンクリート構造物は市民社会の貴重なインフラ(社会基盤)となっていることを認識する態度が必要である。

 

[問題B−1]
 

解説解答例■ 問1

 建築当時の詳細な情報や過去の不具合発生・補修の経歴が不明である前提で、設題の条件では、次のような項目について調査することよい。

@【建物の用途・規模・構造】

A【環境・荷重】特に周辺地盤の土壌の地下水や供給塩化物の条件や、デパートであることで床スラブの積載荷重の現状などは重要な要素である。

B【外観目視調査】ひび割れ・はく離などの変状も含む

C【コンクリートの強度】

D【鉄筋のかぶり厚さ】

E【鉄筋腐食】コンクリートの中性化、塩化物含有量を含む

F【アルカリシリカ反応】

解説解答例■ 問2

 建築物の床スラブの不具合としては、ひび割れ・たわみが一般的である。設題の建物がデパートであることを考慮すると、設計荷重以上の積載によるたわみ障害や経年によるクリープが生じていることが考えられる。この場合に必要な調査は、床スラブのたわみ量計測(レベルやカンチレバー式変位計を用いる)、振動障害が生じているようであれば、振動測定(固有振動数測定装置や衝撃試験装置を用いる)を行うことがよい。また、床スラブのコンクリート強度(コア採取やリバウンドハンマー方による)および配筋(電磁波レーダ方や電磁誘導法による)を調査し、荷重条件と床スラブの変形性状について検証することがよい。

 地下外周壁の不具合としては、ひび割れ・水平打ち継箇所やコールドジョイント箇所からの漏水が一般的である。この場合に必要な調査は、外周壁の屋内面の変状を詳細に観察・記録すること、漏水箇所の鉄筋腐食状態(自然電位法や分極抵抗法による。かぶり厚さなどの配筋位置も調査する)、同箇所のコンクリート中塩化物含有量(試料を採取して全塩分を測定する)、地下水の分析(主に塩化物イオン濃度と硫酸塩)、地下水位の変動、周辺土壌の侵食物質の種類と量、などを調査し、これまでに生じた漏水やひび割れによって劣化した程度(耐久性を低下させた程度)を把握し、今後の耐久性を確保するために対策を講じるべき内容や提示を検討することがよい。

解説解答例■ 問3

 設題の建築物は、不特定多数の人が出入りする商業施設であるため、一般のコンクリート構造物に比べ、落下物などの対人安全性を特に注意を払う必要がある。設題では屋上防水や外装は調査の範囲外となっているが、内壁や天井スラブなどについても、殆どが化粧材で被覆された状態であるため、コンクリート躯体の劣化進展が容易に知ることができない。屋内の部材であっても特にスラブのひび割れやたわみ障害など、異常・変状がないか定期的に点検する必要がある。また、店舗や陳列の変更など、部分的な工事の際には、必ずコンクリート躯体の点検を行うように提案したい。

 

[問題B−2]

【問題解説】 当該橋脚の写真からは、ASRによるひび割れ・反応ゲルの滲出・変色が確認される。ひび割れの大きさや錆汁などの詳細は不明であるが。この劣化過程は、進展期〜加速期、あるいは加速期〜劣化期のいずれにでも設定(仮定)することができる。劣化過程の設定と小論文の記述に整合性があれば解答としては問題ないと考えられる。

解答例■
 
ケース1およびケース2に関わらず、これまで30年間のASRによって、現在の構造物としての安全性が脅かされていないか確認することが必須の調査項目である。
すなわち、【鉄筋破断の有無の確認】、【鉄筋腐食状況(コンクリート中の塩化物イオン量物含有量や中性化深さを含む)】、【ひび割れの深さ・鉄筋位置との関係】、【コンクリート強度・配筋】などを調査によって確認しなければならない。また、ASR反応が収束状態にあるのか、まだ膨張が継続するのかを把握するため、コアを採取し残存膨張試験を実施することも必要な調査項目である。これらの調査は、2つのケースに共通する調査項目である。

 ケース1の場合は、劣化状況写真から判断して、現況においては構造的に緊迫した状態ではないと仮定することができる。この場合、あと10年間の供用延長のために、ひび割れ補修・外部からの水分補給遮断などを主工法として対策を講じ、定期的に劣化の進展を点検するような計画が妥当である。このケースの場合、これまでの供用期間に対して比較的短期間の延長であるため、安全性が確保される範囲で経済的な対策を設定したい考え・期待が背景にあるが、それを可能とする根拠を小論文で記述しておかなければならない。

ケース2の場合は、これまでの供用期間の2倍近くも期間を延長するため、ASR抑制対策とともにFRP・鋼板接着や巻立て、劣化部材の打換えなど構造的な補強が必要になるであろう。追加が必要な調査項目としては、寒冷地山間部にあるため凍結防止剤散布による塩害が継続的に生じるため、現在の塩化物イオン量の分布や拡散速度の検討を詳細に行うことが必要である。また、以降のASR劣化進行を点検することができるように、変位計測や点検口設置なとも維持管理計画において重要なことである。長期間の維持・点検の期間中に期待している性能が満足できなくなる場合も含めて維持管理計画を記述することが望ましい。なお、30年前に建設された道路橋として考えれば、ASRの有無に関わらず、床版などの構造的補強が必要な事態も十分に考えられ、構造物全体として50年延長することは困難とする考えもある。

 
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