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2018年08月09日号

1;骨材需給締まる

大型物件のある地域で、生コン用骨材が逼迫してきている。職人不足や用地買収の遅れなどにより、特需の工期が短くなり、その煽りを受けて生コン工場には瞬発力が求められている。一方で骨材業者は、それに対応する設備投資には慎重で、現有の設備で乗り切る考えだ。現時点では生産不足による影響は限定的だが、骨材輸送を担うダンプ運転手の高齢化などで輸送力にも波及してくれば、需給逼迫が広範に及ぶ可能性もある。ユーザーが求める瞬発力に骨材調達が間に合わない場合、生コン工場では他地域から骨材の移入を迫られることも考えられる。
北海道では新幹線の延伸工事が進められている地域で、骨材不足が顕在化している。札幌では、生コン用骨材の需給が引き締まってきた。札幌地区の生コン骨材を生産する業者は、小樽や倶知安の後志(しりべし)地区で進められている新幹線工事向けの砕石を納入しているが、旺盛な需要に生産が追いつかない状況が続いているため。足元の札幌市内の生コン需要は低調だが、これから新幹線に加えて、再開発工事が出てくる見通し。札幌の生コン需要が上向いてくれば、骨材輸送も繁忙状態になるとみられ、今後道央地区全体で骨材の需給が逼迫する懸念がある。すでに札幌市に近い石狩港には、他県から石灰石骨材が移入されている。生コン需要が上向いてくれば、域外骨材を使う工場も増えそうだ。
採取規制緩和も
石川、福井でも新幹線工事で一時、骨材不足が問題視された。石川県がそれを受けて砂利の採取規制を一部緩和したことで、骨材の供給不安は徐々に緩和されてきている。
また、岩手県南生コン協組の花巻・北上ブロックでは、東芝メモリ北上工場の建設が進められている。こうした中、同ブロックの生コン工場に生コン用骨材を納入していた砕石会社1社が先月末に生産を停止した。東芝メモリの特需が本格化する前だったことでもあり、同協組では組合員間で骨材確保に関する調整を進めている。ただ、他の砕石業者が生産を増やす気配はないという。
特需にも及び腰
骨材業者は近年、こうした特需対応には及び腰だ。一部の老朽設備を更新しても、ベルトコンベアなどの主な設備は既存のままであり、付帯設備も全て更新しなければ思うように生産能力は引き上げられない。ただ、設備を大型化すると、初期投資だけでなく、燃料費などの負担も増える。
また、特需終息後の需要の先行きが不透明であることや、採掘・採取区域の拡張に要する環境アセスメントなどにも数億円の費用がかかることも、骨材業者が設備投資に二の足を踏む要因になっている。現在、骨材業者も事業継続に向けて、生産・物流費の上昇分を転嫁する値上げを進めているが、成果はまだらもよう。こうした中でも採掘資源の減少、設備の老朽化、ダンプ運転手の高齢化や廃業が進行しており、供給力は徐々に低下している。
遠方から骨材が供給されている首都圏や阪神圏以外では、骨材は地産地消が原則となっているが、それ以外の地域の生コン工場も、大型特需への対応や納入業者の廃業という突発的な事態に備えて、代替骨材の調達方法やそれらの標準化を検討しておく必要がありそうだ。