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2018年05月17日号

1;値上げ交渉決着遅れ~セメント

セメントの値上げが遅れている。大手・中堅各社は、石炭価格の高騰や物流コストの上昇などを理由に4月1日出荷分から1000円値上げを打ち出したが生コンなど需要家からの有額回答は限定的だ。一方で足元の石炭価格はトン当たり100ドル台と高値圏で推移しており、各社の収益に強い下押し圧力がかかっている。11日に開かれた決算説明会で住友大阪セメントの関根福一社長は「(値上げを)遅くとも6月中に決着させたい」と強調。太平洋セメントの不死原正文社長は「上期中に具体的なところまで仕上げたい」と述べた。
セメント各社は昨年12月から1月にかけて相次ぎ値上げを表明した。値上げが出そろうのは5年ぶり。キルンに使う耐火レンガの値上がりや継続的な安定供給のための設備維持更新投資も理由に挙げた。
炭価高の影響が業績に影を落とす。2018年3月期の主要5社の国内セメント事業は軒並み減益だった。石油を含めたエネルギー高の影響額は太平洋セメントで45億円、住友大阪セメントで26億円に上り、合理化効果などを吹き飛ばした。
炭価高の影響は今後、さらに強まる公算だ。19年3月期の業績予想によると、太平洋で56億円、住友大阪で20億円の押し下げ要因となる。一方で値上げ効果として太平洋は42億円、住友大阪は20億円を予想に織り込んだ。それでも悪化要因をフルに吸収できず、国内セメント事業はともに減益予想。目論み通りに交渉が進まなければ、大幅減益になる懸念もあることから、値上げの実現は最優先の経営課題となっている。
生コン市況が全国的に上がり、ゼネコンも業績好調など値上げ環境は整っている。それを映して値上げ交渉で需要家は炭価高や物流コストの上昇に理解を示しているという。一部の需要家から有額回答が出てきているが、全般に提示額との開きが大きいようだ。
不死原社長は「(交渉の)感触はいい。それなりの成果が得られると見ている」と手応えを語った。ただ、「もう少し時間がかかる」と述べ、9月末までに交渉を仕上げる考えを示した。目標額は変えず「理解を得られるまで粘り強くやっていきたい」とした。
関根社長は現時点で3割強の需要家から有額回答が出ているものの、「満足できる水準にない」と指摘。交渉は「遅くとも6月中に決着させたい」とした。
また、トクヤマの横田浩社長は先月27日の決算説明会で「コストアップ分は(売価への)適正な反映を図る。業界の先陣を切ってやっていく」と強調した。
セメントの7割を消費する生コン業界ではセメントの購入価格が上がるとの見方が広がる。コンクリート新聞社が全国の生コン製造会社に行ったアンケートによると、4月以降、先高観の強い原材料として約9割がセメントを選んだ。一部の生コン協同組合はセメント値上げを理由に転嫁値上げを表明、あるいは検討している。