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2018年04月12日号

1;分かれる行政の見解~残・戻りコンの所有権

全国で残コン・戻りコンを有償化する生コン協同組合が増えてきた。生コン工業組合を通じて、都道府県に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)における残・戻りコンの扱いを照会し、その見解を基にして各協組が進める形だ。ただ、協組が有償化策を導入する根拠になっている法的解釈、所有権の移転場所は、都道府県によって異なる。地域の生コン業界はその判断をふまえて、有償化の対象を決めている。
2017年度に大きな動きがあったのが北海道と長野。北海道では生コン工組が中心となって建設業者らと合意形成し、生コンの所有権は「型枠に打設した時点で移転」とする文書を道に提出、確認した。それによって残・戻りコンだけでなく、コンクリート圧送の配管に残されたポンプ戻しも廃掃法の対象外となった。これを受けて、道内の全29協組は残・戻りコンの出荷予定キャンセル料(有償化策)の導入検討に着手。導入時期やキャンセル料については地域差があり、すでに今月から有償化した協組もある。また、ポンプ戻しの生コンについては、洗浄水などが混入していない状態であることが条件になる。洗浄水が混入した場合には、現場での処理を求める。
長野も今年2月に県から北海道と同様の解釈が得られた。現在工組が中心となって建設業協会などへPRを始めており、これが一巡した後、各協組で有償化策や導入時期の検討が進められる予定だ。
一方で三重県は今年2月、生コンの所有権は「コンクリートミキサ車から排出した時点で移転」とした。このため今月から県内の生コン工場では原則、先行モルタルやポンプ戻しを引き受けないことになった。ユーザーが従来通り処理を依頼する場合には、中間処理や収集運搬の許可を持った工場、運送会社と新たに契約するよう求める。県内の生コン協組の中には、全量ユーザーが処理の責任を負う先行モルタルの代替材の取り扱いを始めたところもある。また、コンクリート圧送業者は配管内に残されたコンクリートを砕石化する商材を使い、現場での処理を依頼する形を模索する。今後建設現場で、これをどう使用していくか注目される。
西日本では、10年以上前から高い組織率を背景に、残・戻りコンを有償化している協組がある。その一方で府県に見解を照会する地域はみられない。組合員からの要望がないことが大きな理由となっている。元々、残・戻りコンの発生量の少ない郡部では、「発生量の多い都市部の動向を見極めたい」との声もある。