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2018年03月15日号

1;災害支援協定の締結加速~生コン組合

生コン業界で災害発生時にコンクリートミキサ車で消火用水や生活用水(飲料用除く)を供給する協定の締結が急速に進んでいる。契機になったのは2016年末に発生した新潟県糸魚川市の大火。総務省消防庁は、ミキサ車による消火用水の供給が有効だったとして昨年8月、各都道府県に「大規模火災発生時の消防水利確保に関する関係機関との協定締結について」を通達。全国各地で生コン工業組合、協同組合と自治体や消防本部が協定を結んでいる。
ミキサ車が消火用水の供給に貢献できるとされた理由は積載量の大きさだ。6日に三重県生コンクリート協同組合連合会(林健一郎会長)と「災害応急対策に必要な用水の確保に関する協定」を結んだ三重県は「消防車が一度に運べる消火用水は最大で1・5トン。ミキサ車は一度に5トン以上運べる」とし、その有用性を強調した。糸魚川大火では、延べ460台のミキサ車が出動し、水を約2300m3輸送した。これは消火に使った水2万1606m3のうち、消火栓(78%)に次ぐ量だった。ミキサ車で輸送した水を全て消防車で輸送した場合、3000台弱が必要になる計算だ。
三重生コン協組連の林会長は「生コンは地域密着型の商売で、地元愛を持っている」とし、県内に点在する生コン工場は、初期消火の観点からも有効性があるとしている。
また、6日の協定締結式に立ち会った三重県の鈴木英敬知事は、福島県相馬市の立谷秀清市長から東日本大震災の直後に「『飲料水だけでなく、生活用水の確保に困り、衛生状況が悪化した』と聞いた」とし、大規模災害発生時には、生コン工場からの生活用水確保にも期待感を示した。三重県では、すでに鷲熊生コン協組(南牟婁郡御浜町)が自治体と協定を締結している。今後、他の6協組も市町村、消防本部と協定を結ぶ準備を進めている。
福島県生コンクリート工業組合(永田茂男理事長)は9日に福島県と「災害時における消防水等の供給支援に関する協定」を締結した。福島県ではすでに相双生コン協組(双葉郡楢葉町)が昨年5月、浪江町からの要請を受け、山林火災の消火用水運搬に協力した実績がある。今後県内の6協組も順次、自治体と協定を結ぶ予定だ。
業界PRにも
工組や協組連が都道府県単位で締結する際、都道府県に依頼して複数の消防本部と同時に協定を結ぶケースもある。佐賀では昨年12月に佐賀県が県内の5つの消防本部との交渉を一本化したことで、生コン工組が個別に消防本部と折衝する手間が省けた。また都道府県単位で協定を結ぶ場合には知事が立会うケースもあり、普段生コン業界との接触が薄い地元紙やテレビといった一般市民向けのPR、業界の認知度向上という側面もある。
ただ、各都道府県の姿勢は一様ではない。実際に消火用水などを必要とするのは、実働部隊がいる地元の消防本部や市町村。工組や協組連が都道府県単位の協定を求めても、担当者の判断によって、消防本部や市町村単位で協定を結ぶよう促されるケースがあるようだ。今後協定を結ぶことを検討している工組や協組では、社会貢献活動をイメージアップにも生かせるようにする戦略が必要になってきそうだ。