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2018年01月25日号

1;中庸熱・低熱需要が伸長

中庸熱、低熱といったビーライト系セメントの販売が好調だ。都市土木のマスコン対策や、首都圏を中心に高強度コンクリートの需要が回復してきたことが背景にある。さらに、再稼働問題も絡んで原子力発電所の施設で使うコンクリートは「低熱や中庸熱での設計が多くなっているようだ」(セメント大手)。引き合いはなお強く、中でも低熱は生産能力を上回る勢いという。だが、ビーライト系セメントは、品位の高い石灰石を使うなど生産に制約が多く、増産は容易ではないことから、今後、品薄が常態化する懸念もある。
ビーライト系セメントには水和熱の抑制、長期強度の増進などといった効能がある。セメント販売に占める割合は、おおむね中庸熱が1・5%、低熱が0・4%と市場規模は小さいものの、根強いファンも多い。最大の消費地は関東一区で、占有率は中庸熱が7~8割、低熱が5割前後。低熱は近畿のウエイトも高い。セメント上位4社が製造・販売している。
2016年度の販売量は、4~11月で中庸熱が前年同期比24%増の47万トン、低熱が18・3%増の12万7千トンだった。関東一区が押し上げており、中庸熱は31・8%増の39万4千トン、低熱が17・2%増の6万トンとなった。今年度に入って都心で大規模再開発工事や五輪施設工事、インフラ整備が活発化している。昨年度が不調だった反動を差し引いても、その水準は高い。
また、茨城での中庸熱の販売量が11月時点で2万トンを超え、すでに前年度実績の4倍に達した。セグメントなど製品でも採用されるケースが増えているもようだ。
足元の引き合いも旺盛だ。福島での放射性廃棄物の中間貯蔵施設やリニア中央新幹線、老朽インフラの再構築、都心の大規模再開発などを背景に、中長期的に一定の需要規模を維持すると見られている。
ただ、ビーライト系セメントは需要が増えたからといって直ちに供給量を増やせるものではない。生産上の制約のほか、出荷工場も限定されている。「今の生産体制では需要に追い付かなくなる恐れがある。状況を見極めながら、増産など対策を検討していく」(同)と供給不足の回避に努める。