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2017年11月24日号

1;橋梁にコンクリート舗装

太平洋セメント、太平洋マテリアルは、北海道の北斗市の承認を得て12日、北斗市の市道「添山29号線」に架橋する宗山川3号橋の舗装部に、太平洋マテリアルが販売するラテックス改質速硬コンクリート(LMFC)を試験施工した。国内で橋梁の舗装(橋面舗装)にコンクリートが採用されるケースは少なく、新たな材料や技術の開発で、橋面舗装分野における採用拡大を目指す。12日には土木学会の鋼構造委員会道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会(橘吉宏委員長)のメンバーも視察に訪れた。
国内で橋面舗装にコンクリートが使われない理由は、舗装設計施工指針に、版厚が薄いため「乾燥収縮等によるひび割れが生じやすい」と記載されているためだ。
一方、米国では橋梁上の舗装は、橋梁の長寿命化が図れる工法として、コンクリートが採用されることの方が多い。国内でも橋面舗装を定着させるべく、土木学会の小委員会では昨年、京都府の大山崎町の天王山古戦橋でコンクリートによる橋面舗装の試験施工を行うなどマニュアル作成を検討している。
今回の橋面舗装で使用したLMFCでは、特殊ラテックス混和剤「モディφ(モディファイ)」を混入した練混ぜ水に、太平洋マテリアルが販売する速硬性混和材「Facet」(ファセット)を組み合わせた。橋梁への劣化因子の侵入を抑制するだけでなく、早期に交通開放もできることから、道路構造物の補修に適している。天王山古戦橋とは気象条件が大きく異なる積雪寒冷地でのデータ収集が大きな目的。両社は今回の共同実験で得られたデータを土木学会やセメント協会、寒地土木研究所にも報告し、学会で発表していく予定だ。
セメントや細・粗骨材を事前に計量して封入したドライミックスと、特殊ラテックス混和剤を混入した練り混水を現場練りミキサで混合し、人力施工した。圧縮強度は6時間で24N/mm2、長期的には60N/mm2に達する。施工面積は上下線合わせて220m2。版厚は平均約6cmで、生コン打設量は13m3だった。12日に上り車線、19日に下り車線をそれぞれ施工した。いずれの車線においても、硬化中のプラスティックひび割れや硬化後の収縮ひび割れは全く認められず良好な仕上がりだった。
技術開発の第一歩
今回の橋面舗装は既設床版の長寿命化を目的としているため、現時点では生コン業界にとって需要開拓の余地は小さい。ただこの技術が発展すれば、米国のように橋梁を新設する際、構造部と舗装部を一体的に施工する合理的な生産・施工技術につなげられる可能性がある。太平洋セメントと太平洋マテリアルは今回の取り組みを、その第一歩と位置づけて研究を進めていく。