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2017年10月19日号

1;埋設型枠の指針策定へ~国交省

国土交通省は10日、同省で第5回コンクリート生産性向上検討協議会(前川宏一会長)を開き、生コン、コンクリート製品双方の需要拡大が期待される埋設型枠のガイドラインを策定する方針を示した。また、生コン関連の生産性向上策の方向性が示されたほか、コンクリート製品3団体(全国コンクリート製品協会、全国土木コンクリートブロック協会、道路プレキャストコンクリート技術協会)がプレキャストコンクリート(PCa)製品の採用拡大策を提案した。
埋設型枠については、脱型作業が省略でき工期短縮やコスト削減が図れるため、型枠職人不足を解消できる技術として注目されている。埋設型枠自体はコンクリート製品だが、生コンも使用される。コスト低減が進めば、利用実績の多い砂防ダムや擁壁などで採用が増える可能性がある。
その品質については昨年、土木学会がまとめた「コンクリート構造物における品質を確保した生産性向上に関する提案」で、「埋設型枠を構造断面やかぶりとしてみなす規定を整備する」とされていた。埋設型枠は背面に打ち込まれる生コンと一体化させる必要があるが、温度や湿度、凍結融解などの影響を受ける可能性を考慮する必要があり、今後これらに対応する研究を進めていくことが提案されている。これを受け同省は、研究開発の進捗状況を勘案し、今回の会合で将来的に埋設型枠の適用に関するガイドラインの策定を目指す方針を打ち出した。
このほか、生コン関連では、流動化剤の適宜使用を可能とする規定の整備や、振動締固めを必要とする高流動コンクリートについては今後、品質管理手法や検査方法を検討し、工事共通仕様書や積算に順次反映していく方針が示された。
スランプ値については、協議会で昨年度末にまとめた「流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用に関するガイドライン」を受け、すでに同省は4月にスランプ値12cmを特記仕様書に明記する通達を出したことを報告した。
コスト以外で評価を
コンクリート製品3団体は、PCa製品を評価するうえで、安全性の確保や熟練工不足への対応、現場の労働環境改善、環境負荷低減など単純なコスト比較だけでない項目も評価するよう要請した。
3団体は今年3月に開かれた同協議会の第4回会合の後、PCa製品が採用された事例を調査。その結果、評価に使われた検討事項のトップは「工期短縮」が最も多く93%を占めた。工期短縮の効果を、金額換算しやすいものは順次、積算に反映させる一方で「施工条件や施工業者の事情など金額換算が難しいニーズがある」とし、それらも評価するよう求めた。またPCa製品の採用ニーズのある「安全性の向上」や「熟練工不足への対応」など数値化が難しい項目についても評価するよう要請した。
一方、コスト縮減・仮設の低減の効果については、同省が4月に出した通達ですでに評価項目の一つとなっている。
プレストレスト・コンクリート建設業協会もPC橋梁の新たなコスト算出手法を提案した。従来の指標では、材料の調達コストや工期短縮が比較対象となっていたが、さらに省力化や省人化、環境への配慮、ライフサイクルコスト(LCC)などの指標を示し、これらを加えた試算結果を提示した。
開会のあいさつに立った前川会長は「会合を重ねるごとに協議会への期待が高まっていると感じる。コンクリート工事に携わる全員が生産性を上げることによって全体最適化を図りたい」と語った。