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2017年09月07日号

1;橋梁床版・港湾の補修需要拡大

老朽構造物の増加で維持・補修分野への注目度が一段と増している。補修材メーカー各社はメンテナンス工事の増加を見据え、特に道路橋梁のコンクリート床版の上面補修や港湾構造物の塩害対策など重点分野を絞り、商材のラインナップを強化している。断面修復材やグラウト材、吹付けモルタルなど新商品の開発が進んでいるほか、電気防食や犠牲陽極材と組み合わせたり樹脂など有機材料も使用した工法も提案している。

高速道路各社は2015年から高速道路リニューアルプロジェクトをスタートし、コンクリート床版の修繕を進めている。1963年の名神高速道路開通から50年以上が経過し、総延長9000kmのうち供用から30年以上経過した区間が約3700kmと全体の4割を占めており、床版の取り替えや大規模更新の前に行う補修工事が注目されている。
こうした中、補修材メーカー各社は道路橋梁のコンクリート床版の補修材の開発を進めてきた。キーワードは舗装と同様に、早期交通開放性と付着性能だ。どちらもNEXCO3社が昨年改正した「構造物施工管理要領」の床版上面における断面修復材の性能照査項目になっており、この項目を満たすことが、NEXCO3社で採用される前提条件となっている。太平洋マテリアル、住友大阪セメント、三菱マテリアルでは、早硬性能を売りとした商材を販売している。メーカー各社は高速道路だけでなく、国道や都道府県道でも補修工事が増えると見込んでおり、今後の需要拡大を目指している。
道路と並んで劣化の進行が早いとされるのが港湾構造物だ。ひび割れから塩化物イオンが侵入し、鉄筋が腐食するケースが多く、補修工事の件数が増えている。また、道路についても凍結防止剤を使用する地域では塩害が発生するため、塩化物イオンの吸着・固定化が焦点になっている。
デンカは塩化物イオンを固定化する商材を吹付け、左官、型枠など幅広い用途で展開している。三菱マテリアルも塩分吸着剤が港湾工事を中心に実績を伸ばしている。太平洋マテリアルは主力補修工法であるリフリート工法に「DS仕様」があり、同工法を扱う専門工事業者が増えている。
また、住友大阪セメントとデンカは断面を修復する際に犠牲陽極材や電気防食工法の併用を提案しており、高レベルな補修を目指している。
樹脂など有機材料を組み合わせた工法開発も進む。デンカはアクリル系樹脂接着剤を透明な特殊繊維シートに塗布含浸し、劣化箇所を保護する工法を開発した。宇部興産もウレタン系材料を用いた補修材の開発を進める。