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2017年08月10日号

1;中・高流動コンクリート採用拡大へ~職人不足を緩和

建築物件でも中・高流動コンクリートの採用拡大に向けて、大臣認定を取得するケースが増えている。高流動コンクリートの大臣認定の取得件数は54(うち1件はシラスコンクリート)で、昨年が20件、今年は7月末時点で10件だった。中・高流動コンクリートはこれまでNEXCOや国土交通省発注のトンネル工事など主に土木工事で採用されていたが、施工性だけでなく、昨今課題となっている職人不足の緩和にもつながるとして、ゼネコンも注目し始めている。

大臣認定が増えた背景は、増粘剤一液型の高性能AE減水剤が登場したことだ。従来のフライアッシュや砕石粉など粉体量を増やす製造方法は、生コン工場ではサイロの荷繰りなどの手間がかかるため、「価格もベース価格の2倍程度」(大手ゼネコン)になった。増粘剤一液型の高性能AE減水剤が一般化したことで、混和剤タンクの入れ換えで対応できるようになり、製造の手間が減って価格も下がった。13年にはNEXCOがトンネル覆工向けの中流動コンクリートを標準化したこともあり、土木分野で採用が広がった。国土交通省のコンクリート生産性向上検討協議会でも中・高流動コンクリートの採用拡大が検討され、昨年度末に公表されたガイドラインでも採用にあたって技術的な、留意点がまとめられた。

一方、建築分野でも大臣認定の取得で出荷が増え始めた。大臣認定を取得した工場では、構造物の耐震化に伴う鉄筋の過密化や高層化による高所圧送が必要な箇所に出荷されている。

こうした中、建築物件でも使用しやすくする基準類の整備が進んでいる。生コンJIS(A5308)の普通強度領域にスランプフロー管理を導入する動きが進んでいるほか、建材試験センターが中心となって策定した間隙通過性能を確認するJリング試験、日本建築学会の高流動コンクリート指針にもスランプフロー45cm(スランプ23cm相当)の中流動コンクリートを取り込む作業が進んでいる。

ゼネコンも基準類の整備に期待している。一番大きな要因は職人不足だ。中・高流動コンクリートを採用すると、締固めに要する人員が減らせるため、生コン価格が多少高くなってもメリットがある。ただ現在建築物件に中・高流動コンクリートを採用するには、土木物件と異なり、大臣認定を取得する必要がある。ゼネコンも生コン工場と共同で取得し始めているが、これは基準類が整備された後に利用するための準備段階という位置づけだ。本格的な普及時期について、大臣認定を取得している生コン工場は「フロー管理が盛り込まれた最新の生コンJISが建築基準法に引用された後には供給体制が整備され、採用が増える」とみている。