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2017年04月27日号

1;スランプ12cm運用開始~生コン

土木構造物のコンクリートのスランプ値を12cmに移行する取り組みが本格的に動き出す。国土交通省は7月1日以降に入札公告される案件について、特記仕様書にスランプ12cmを標準値として明記するよう、各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局へ通知した。また受注者からスランプ値の変更を求められた場合、さらにスランプ値を引き上げることもできる。生コン業界では、スランプ値の上限要求が解消されると期待感が広がっている。

スランプ8cmは最も経済的であったことから、土木構造物の発注業務において金科玉条のように扱われてきた。ただ、耐震性の強化に伴う鉄筋の過密化、施工条件の変化などで、生コンの充填不足が懸念されるようになってきた。施工者からはその対応として、生コン工場にスランプ8cmの上限となる「10・5cm」での出荷を要求するケースが絶えなかった。こうした実態を勘案し、2007年の土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」では、「発注時に指定するスランプはポンプ筒先時点でのスランプから逆算して決める」との考え方が示された。発注者には安易に「スランプ8cm」を採用しないよう促したが、コストアップを伴うことなどから、発注者が「スランプ8cm」の仕様を変更することはなく、その後も生コン工場への上限要求は続いていた。

大きな転機となったのは、国交省が昨年から始動したi―Construction(アイコンストラクション)だ。コンクリート工事の生産性向上がトップランナー施策の一つに掲げられ、同省は「コンクリート生産性向上協議会」(前川宏一会長=東京大学教授)を設置。昨年9月の会合では、スランプ値を参考値扱いとし、12cmを標準とする考え方が示された。これを受け、3月末に協議会傘下の「流動性を高めたコンクリートの普及検討委員会」(橋本親典委員長=徳島大学教授)がスランプ12cmを標準とするガイドラインを取りまとめた。

スランプ値の変更に伴う生コンの単価上昇分は、積算価格に基づいて算出し、国が負担する。同省技術調査課では「単価上昇幅は100~200円のため、全体の工事額に占める割合は低い」とみている。

7月以降の運用状況を確認したうえで、将来的には都道府県などの地方自治体にもスランプ値の考え方を変更するよう通知を行うか検討する。また、同省の土木工事共通仕様書には19年4月に予定している改正で反映させる予定だ。