文字サイズ(変更方法 文字サイズを大きく 文字サイズを小さく
2016年10月20日号

1:事業継続に危機感 値上げ表明相次ぐ~関東一区の生コン協組

関東一区で生コン協同組合による値上げ表明が相次いでいる。玉川生コンクリート協同組合(川崎市)、埼玉県北部生コンクリート協同組合(熊谷市)が来春から販売価格を引き上げることを決めた。共販事業を行う14協組のうち、両協組を含めほぼ半数の6協組が今年度に入り値上げを打ち出した。コスト高と需要急減の二重苦に見舞われるなか、老朽設備の更新や若手人材の確保もままならず、事業継続への危機感が高まっていることが背景にある。

玉川協組は4月1日以降の引合受付分から販売価格を500円引き上げる。「人材確保、輸送体制の整備、生産設備の老朽化などによるコストアップに対応してきたが、経営環境は以前にも増して厳しくなり、事業継続もままならない状況」(同協組)のためで、12日に開いた登録販売店会議で正式に表明した。内陸骨材業者が値上げ未達分の確保に向けて再び攻勢を強めてくる可能性もある。生コン運搬費の上昇懸念を含め、そうしたリスクも考慮に入れた。

値上げは2年ぶり。ベース品(18・18・20)の希望販売価格は世田谷・目黒向けが1万2500円以上(仕切価格1万2000円以上)、川崎向けが1万2000円以上(同1万1500円以上)となる。
埼玉北部協組は12日に開いた登録販売店会議で、4月1日以降の引合受付分から700円以上値上げすることを申し入れた。これで埼玉県に軸足を置く3協組全ての値上げが出そろった。
需要環境の悪化などで固定費が膨らみ、設備削減などの自助努力で吸収できなくなっているため。建値は1万3000円(18・18・20)で据え置き、販売店への仕切価格を700円上げる。
これまでに神奈川、湘南、埼玉中央、秩父地区各協組が値上げを打ち出し、一部は実施している。
コストアップの転嫁に終始してきた従来型の値上げは、再投資可能な基盤の構築へと到達目標を変えつつある。それを如実に表しているのが値上げ表明に際し、埼玉中央協組が登録販売店などに示した組合員各社の「実態」だ。
プラント建設後25年以上経過した工場が70%を占め、5年以内に大規模改修を要する工場が60%に達する。加えて、従業員の高齢化と人員不足も深刻で、10~30歳代の構成比は17%にとどまる一方で、60~70歳代は21%を占める。そのうちの63%は非正規雇用だ。今後3~5年以内に組合員会社のほとんどで技術者や運転手が不足するとされている。
同協組に限らず、程度の差はあれ、業界各社が直面する共通の課題となっている。合理化の余地が限られるなか、今後、経営の健全度を取り戻す手段として値上げに頼る場面が増えそうだ。

埼玉県北部生コンクリート協同組合は来年1月1日引合分から戻りコンを有償化する。3か月の試行期間を設けて4月1日からキャンセル料としてm3当たり5000円を請求する。関東一区で有償化制度を取り入れた協組は14となり、ほぼ全域を網羅した。